損保ジャパン日本興亜美術館・吉田博展
損保ジャパン日本興亜美術館で開催されている「吉田博展」を見てきました。
吉田博は明治9年久留米に生まれ、福岡の図画教師、吉田喜三郎に画才を見込まれて吉田家の
養子となり、上京して画塾、不同舎に入門し、「絵の鬼」と呼ばれるほど写生に打ち込みました。
水彩で、油彩で、木版画で、国内はもとより世界各地の風景を描いた作品が日本やアメリカ、ヨーロッパで
大好評を受けました。
展覧会では初期から晩年までの200点の作品が展示されています。
チラシと図録から一部ご紹介します。
吉田博展 チラシ チラシ裏
(不同舎の時代)
花のある風景 冬木立
水彩 紙 32、8x49、4cm 水彩 紙 50、6x66cm 雲叡深秋 油彩 カンバス
111x68、2cm 断崖の渓谷を流れる川が見事に描かれています
(外遊の時代)
明治26年にフランスから帰国した黒田清輝と久米桂一郎は、フランスで学んだ外光表現による滞仏作品を
発表して、熱狂的な歓迎を受け、白馬会の結成に繋がります。
これに対抗して明治32年に吉田博は中川八郎とアメリカに出発します。
この時、デトロイト美術館のグリフィス館長は二人の絵の質の高さに驚き、展覧会開催を申し出ました。
展覧会は大成功を収め、絵の売り上げは驚異的なものでした。(小学校教諭の13年分)
翌年はボストン美術館で展覧会を開き、デトロイトの倍以上の売り上げを手にしました。 鳥居の下の人々、花咲く日本の村
水彩 紙
グロスター 油彩 カンバス ポンシデレオン旅館の中庭
ボストン郊外の芸術村 水彩 紙 フロリダのホテル
ウインザー橋 水彩 紙 ヴェニスの運河 油彩 カンバス
48x32、7cm 39、5x50cm
ウインザー城が雨に霞んで描かれています
(画壇の頂へ)
帰国後、活気が失われた明治美術会を刷新し、太平洋画会を設立し白馬会に対抗します。
穂高山 油彩 カンバス 富岳 油彩 カンバス
108、5x137cm 45、6x60、3cm
本格的な登山をして描きました 雲がかかる富士山と湖
池の鯉 油彩 カンバス バラ(5) 油彩 カンバス
112x69、5cm 149、8x76、6cm
(木版画という新世界)
写実的で精緻な、詩情に溢れた木版画を作成しますが、吉田博は下絵描きであり、彫師、摺師と共に
渡邊庄三郎の監修の下にありました。
帆船 朝日 渡邊版 木版 紙 帆船 日中 渡邊版
45、5x33、2cm 45、5x33、2cm
瀬戸内海に浮かぶ帆船、背景を空と海だけで描いています 詩情あふれる絵です
同じ版木を使い、色を変える別刷りの方法で作成 グランドキャニオン 油彩 カンバス
45、5x60、6cm グランドキャニオンを見ての感動が表現されています
モレーン湖 油彩 カンバス エル キャピタン 木版 紙
45、5x60、6cm 37、4x25cm
ヨセミテ渓谷 高さ1000mの花崗岩が圧倒的
渡邊版画店と袂を分かち、自らが版元となり、絵師となって創造の中核に座り、彫師や摺師を監修し、
「渓流」では彫りも自分で行いました。 マタホルン山 木版 紙 51x36cm
同じ版木を使って、マッターホルンの急峻な頂と、ふもとの村の昼と夜の景色を描きました
スフィンクス 昼と夜 木版 紙 25x37、2cm 黒部川 木版 紙
帆船 朝 木版 紙 帆船 午前、午後 木版 紙
50、8x35、9cm 先の渡邊版、帆船と違い、自ら監修し、絵師となって堀師、摺師を指示し作成
雲井櫻 木版 紙 53、9x70、7cm 渓流 木版 紙 54、5x82、8cm
吉野山の桜 水の流れや渦巻く水の複雑な動きがしっかりと
表現されています
(新たな画題を求めて)
フワテプールシクリ(王宮) 油彩 カンバス タジマハルの庭 昼 夜 木版 紙
60、6x45、5cm 24、7x37、5cm
4度目の海外旅行 インドの王宮の精緻な装飾を タージマハルで満月を迎えられるよう旅程を組み、
画面いっぱいに表現 夜景も写生できました 陽明門 木版 紙 37、9x24、8cm
彫刻や複雑な構造を表すため、96度もの工程を経て完成
(戦中と戦後) 急降下爆撃 油彩 カンバス
137x108、3cm
日本軍の戦闘機の戦闘場面 大地が転倒する視界の緊張感
これらの他、沢山の水彩画、油彩画、木版画や写生帖、スケッチなどが展示してありました。
「絵の鬼」と呼ばれた吉田博の確かな、多彩な技術と才能、それを実行する意志に感動しました。
この展覧会は8月27日まで開催されています。
損保ジャパン日本興亜美術館
東京都新宿区西新宿1-26-1 42階
Tel 03-5777-8600
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